姉弟コミュニケーション研究 #2

娘ちゃんが2歳10ヶ月のころ、息子くんが産まれました。

ほにゃほにゃの新生児だった息子くんは、すくすく成長し、今ではずり這いで部屋中探索しています。そんな息子くんと、おませな娘ちゃんがどんなコミュニケーションをとっていくのか継続して観察・研究していきたいと思います。

息子くんが娘ちゃんを育て、娘ちゃんが息子くんを育てる。

共に成長していく2人を、理学療法士と上級心理カウンセラーの資格を持つママがみつめていきます。

息子くん9か月、娘ちゃん3歳7か月

息子くんは9ヶ月になると、ついにずり這いをマスターしました!!
自由に動ける範囲が広がったため、おもちゃの争奪戦はますます激しくなりました。

息子くんがこれまで使っていたおもちゃは、握りやすいもの、歯固めのようなもの、音が鳴るものなど、単調なものが多い傾向にありました。ですが、成長に合わせて知育玩具やビジーボードなど、魅力的な機能を搭載したものを追加しています。

娘ちゃんが赤ちゃんの頃使っていたものですが、3歳になった今となっては目新ししく見えたと思います。もちろん娘ちゃんにも遊んでもらって大丈夫なのですが、息子くんだって遊びたいのです。

2人で仲良く遊ぶにはまだまだお互い難しいところがありますので、もちろん取り合いになります。力でも機動力でも勝る娘ちゃんには、息子くんは手も足も出ません。「遊びたいけど遊べない」ということは理解できるので、息子くんはえ〜んと泣いてしまいます。

そして、娘ちゃんの使うおもちゃも、息子くんにとって大変魅力的に見えています。
ブロックやパズル、おままごとの道具等、一生懸命に娘ちゃんを追いかけて「僕も触りたいよ」とアピールしています。

娘ちゃんは一緒に遊んでくれることもあれば、1人で集中したいこともあるので、後者の場合はやはり息子くんは泣いています。

このように、おもちゃの争奪戦は起こるべくして起こっています。
どちらも悪くありません。強いて言えば、おもちゃが魅力的なのが問題です。

息子くんのおねだり

気になるおもちゃを発見し、近づいていく息子くん。そばでは娘ちゃんが先に遊んでいます。

息子くんがそのままおもちゃに触ると、娘ちゃんが「今使ってたの!」「娘ちゃんの!」と怒ります。「これ、息子くんに貸してもいい?」と息子くんの気持ちを筆者が代弁するだけでは、娘ちゃんからの許可はいただけません。

難しい…!!

息子くんと筆者の最適解

息子くんが辿り着いた最適解は、

気になるおもちゃを少し触ったり、手に取ったら、娘ちゃんのほうをじっと見つめることです。

吹き替えをするならば、「僕はこのおもちゃであそびたいんですが…」ですね。

娘ちゃんのお顔をみつめている様子は、娘ちゃんからの返答を待っているかのようです。
ここも吹き替えをするなら、「お姉ちゃん、これ使ってもいい?」です。

そして、筆者の最適解はこうです。

「ねえね、息子くんがこっちをずーっと見てるよ。このおもちゃで遊びたいよーってねえねに聞いてるんじゃないかな。どうしようか?」と尋ねることです。

この語り口で意識しているポイントは3つあります。

①息子くんが娘ちゃんに声をかけようとしていることを伝え、娘ちゃんにその様子をみてもらう
②息子くんが何を伝えたいのか代弁する
③最終的な解釈・判断は娘ちゃんに任せる

この3つを満たす語りをすると、おねだり成功率が格段に上がるということがわかりました。

娘ちゃんへの最適解

筆者が思うに、「①息子くんが娘ちゃんに声をかけようとしていることを伝え、娘ちゃんにその様子をみてもらう」というポイントが最重要です。

娘ちゃん自身が、息子くんの訴えをキャッチする準備を整えることが大切だったのです。

さらに、「③最終的な解釈・判断は娘ちゃんに任せる」では、筆者が代弁した息子くんの気持ちと、娘ちゃんが読み取った息子くんの気持ちが異なったとしてもOKとします。

他者の気持ちを想像すること自体に価値があり、自分がどう感じてどう行動するかは自由です。

貸し借りのパターンでいえば、最終的な行動は「貸さない」かもしれません。
ですが、「貸さない」という判断の裏に、「相手の気持ちと自分の気持ちに向き合い考えた結果」という一連の流れがあるのならば、とても価値ある判断であり、尊重されるべきものです。

相手の気持ちを優先すること繰り返したり、強要してしまうと、自分の気持ちを蔑ろにする癖がついてしまったり、行動の枠を狭めてしまい、内面的な成長のチャンスを奪ってしまいます。

心を通わせる

相手の立場に立って物事を考える能力は、コミュニケーション能力の根幹をなすものであり、社会に出てからも求められる能力のひとつです。

しかし、相手の気持ちを尊重し自分が我慢ばかりになってしまうと、疲れたり後悔することが増えてしまいます。そればかりか、自己肯定感を下げてしまう要因になりかねません。

相手の気持ちを汲み取ること、そのうえで自分の気持ちを伝えることが大切です。
心が通いあうコミュニケーション能力を育てていきたいですね。

息子くん10か月、娘ちゃん3歳8か月

ごめんね

さて、これまで、争奪戦の結果、息子くんが泣くと娘ちゃんも一緒になって泣いてしまうケースがほとんどでした。

お友達に対しては言える「ごめんね」が姉弟だとなかなかでてこないという状況には、甘えや安心感、ライバル心や嫉妬が隠れています。

ですが、このやり取りにも変化が出てきました。

息子くんが10ヶ月、娘ちゃんが3歳8ヶ月の頃、いつものように争奪戦で息子くんが泣いた時、娘ちゃんは小さな声で「ごめんね…」と呟いたのです。

息子くんに対してはなかなか言えなかった「ごめんね」が、初めて出ました。

娘ちゃんなりに、泣いている息子くんの気持ちを想像したり、息子くんを泣かせてしまったというところを考えての言葉だったはずです。

その過程を思うと、胸を打たれる思いですし、とても立派だったと思います。

ごめんねはなぜ言いにくい?

「ごめんなさい」はなぜ言いにくいのでしょうか?

背景には心理的な要因や、心の発達が深く関係しています。

3つの主な理由を解説します。

理解力・共感力が育っていない

何が悪かったのか理解できていない可能性があります。
また、3歳という月齢では、共感力が未熟であったり、相手の視点で物事を見ることが難しいという点も「ごめんね」が言えない理由としてあげられます。

息子くんのおもちゃを取った時は、「欲しかった」という気持ちが先行しており、取られてしまった息子くんの気持ちを想像しづらい状態です。

感情のコントロールが難しい

感情コントロールが未熟なことも理由のひとつです。

想像してみてください。姉弟喧嘩では、娘ちゃん自身も感情が高ぶっています。
泣いている息子くんの声、2人をみつめるママの視線。現場から逃げ出したくなるでしょう。

この時、娘ちゃんはきっと、ママに怒られるかもしれない、弟を泣かせてしまった、こんなはずじゃなかった…とものすごい速度で情報を処理しているはずです。

その結果、頭はパンクし、心のダムは決壊。娘ちゃん自身も泣き出してしまうのです。

「謝った方がいい」と分かっていたとしても、謝るどころではありません。
色々な感情がどんどん先を行ってしまい、収拾できなくなっています。

納得していない

「自分は悪くない」「自分にも言い分がある」と感じ、謝れないこともあります。

例えば「息子くんが離さなかった」等と思っていれば、不満や不公平感から口を閉ざしてしまうことがあります。それどころか、「ねえねが使うんだもん!」とお怒りの言葉が続いてしまい、謝るどころではなくなります。

このようなときには、子どもの気持ちを丁寧に聞くことが重要です。

娘ちゃんは難しいお年頃

2〜3歳

2〜3歳頃は、思考が自己中心的な段階であり、他者の気持ちを理解しづらいという特徴があります。

息子くんが握っているおもちゃが欲しい時は、「欲しい」という気持ちが強く、「おもちゃを取られたら息子くんが悲しむ」という発想には至りません。

優しいとか心が狭いとかいうレベルの話ではなく、他者の気持ちを推し量る力が未熟な月齢なのです。

4〜5歳

4〜5歳頃になると、他者の気持ちや感情を想像する力が育ち始めます。
一方で、「自分の誤りを認めたくない」という気持ちが無意識下で生まれることがあります。

現場の緊張感や、罪悪感、息子くんへの嫉妬から、口をつぐんでしまうこともあります。
「ごめんなさい」を言わないことで自分を守ろうとしているのです。

状況

心理的に不安定な状況では素直に謝るのが難しい場合があります。

怒られるかもしれないと緊張している時または怒られて落ち込んでいる時、息子くんが大泣きして責められているような気分になってしまった時、みんながいる場面でも心理的に大きな負担がかかります。
こうした状況では、「ごめんね」を素直に伝えることはできません。

ごめんねを言えるように

基本的には無理強いはせず、子どもたちから自然に発せられるようになるように根気強く待つことが大切です。
大人にできることは、素直に「ごめんなさい」をする姿をみせること、「ごめんなさい」の気持ちを受け止めてあげること、気持ちの切り替え方を教えてあげることです。

大人も謝る

大人が謝る姿を見せることが大切です。

ぶつかったり、おもちゃ踏んでしまったりしたら、「ごめんね」と声をかけます。
大人が謝らなければ、子どもも「謝らなくていい」ことを学習してしまいます。

大人が素直に謝る姿を見ていれば、子ども自身も自然と「ごめんね」と言えるようになります。

子どもの気持ちを受け止める

「ごめんね」が言えるようになるためには、まずは子どもの気持ちや行動を受け止めます。

「おもちゃを貸してほしかったんだね」「お話を聞いてもらえなくて怒っているんだよね」というように、子どもの気持ちと行動を言語化します。

子どもは「自分の気持ちを分かってもらえた」と感じ、心が落ち着くと相手の気持ちを考える余裕が生まれます。

自分の気持ちを理解してもらえる経験を重ねることで、自然と他者への共感が育っていきます。

謝ったら気持ちを切り替える

謝ることで「関係が修復される」というポジティブな経験を持たせるために、
謝った後は気持ちを切り替えましょう。

子どもが謝った後も「本当に反省してる?」「前も同じことして謝ったよね」などと、責め続けることは避けましょう。「謝ってもダメなんだ」と、子どもが謝罪の意味を見失ってしまいます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

姉弟コミュニケーション研究では、息子くんと娘ちゃんがどんなコミュニケーションをとっていくのか、発達の視点を絡めながら継続して観察・研究していきます。

9~10か月頃の息子くんと3歳後半の娘ちゃんのコミュニケーションは、より高度なものとなりました。

息子くんの欲求や探索は、日々深まるばかり。
娘ちゃんは、葛藤しながら、自分自身の想いを一生懸命伝えようとしています。

「相手の気持ちを汲み取ったうえで自分の気持ちを伝える」ことは、大人にとっても大変なことです。
ですが、心が通いあうコミュニケーション能力を育むために、必要不可欠な土台となります。


どうしたら2人で楽しい時間が過ごせるのか。それぞれが自由な時間が過ごせるのか。
筆者としては、今後2人が、どんなかかわり方をしていくのか、とても楽しみです。
そして、そんな2人から何を学んで、どんなサポートができるのか。

息子くんが娘ちゃんを育て、娘ちゃんが息子くんを育てる。

そんな姿を特等席でみられるなんて、とっても幸せです。

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