「ママのお話し聞いてる?」「さっきも言ったよね?」
何度言っても伝わらない、効果的な声かけが知りたい、なんてお悩みを抱えるママやパパは多いはず。そんな悩みをかかえるママやパパにとって、本記事が少しでもお力になれますように。
理学療法士と上級心理カウンセラーの資格をもつ筆者が、全3回に分けて「子どもの脳と心にとどく声かけ術」について解説していきます。
本記事は、第1回「3つの運動原理を活かした声かけ」についてのお話です。

理学療法士が1番初めに学ぶ「運動効果を最大化する3原理」は声かけ術のヒントともいえるのです!
さて、子どもの心にとどく声かけとはいったいどんなものでしょうか?
私たちが声をかけると、子どもたちは脳で受け止めたあとに行動へ移していきます。
そこで、子どもの脳の特性についてお伝えします。
そのあとで運動原理の例を交えながら声かけ術を日常生活に落とし込んでいきます。
子どもの脳の特徴
子どもの脳はひとつの刺激(例:片付けをする、いい子にする)に対する持続力が低いため、途中で活動が低下し、脳がお休みモード(飽きた状態)になってしまいます。
文脈の理解力が低く、一度に複数の情報を処理する容量(ワーキングメモリ)が限られています。
そのため、具体性のない言葉を投げかけられると、頭の中で行動の計画を立てることができずフリーズしてしまいます。
子どもの脳は全体が一様に育つのではなく、運動野、言語野、視覚野などが個別に、具体的な経験を通じて発達します。これらの統合がすすみ、複雑なタスクが可能になるとされるのは6~8歳以降といわれています。
「ちゃんとしなさい」は大混乱のもと
親が「ちゃんとしなさい」と言ったとき、子どもの脳内では以下のようなエラーが起きます。
まず言語野が「ちゃんとしなさい」という音をキャッチします。しかし、子どもの脳には「ちゃんとする」という抽象概念に対応する神経回路(フォルダ)が存在しなません。言語野は、どの指示を出せばいいかわからず、運動野(体を動かす回路)や視覚野(目で見る回路)へ電気信号を送ることができません。
結果として、脳内ネットワークが迷子になり、子どもは直前の行動を続けるか、フリーズしてしまうのです。
子どもの脳のキャパシティがいかに少ないかイメージできたでしょうか?
「ちゃんとする」「いい子にする」といった抽象的な言葉は、脳のどの部位またはどのネットワークを働かせればいいのか、子どもの脳では特定(マッピング)できないのです。
では、どうしたら子どもの脳にきちんと言葉がとどくのでしょうか?
3つの運動原理と合わせてみていきましょう。
運動の3原理とは
運動効果を最大化する3原理について、まずは簡単にお伝えしていきます。
✔ 過負荷の原理:いつもより少し強い刺激が運動効果を生む
✔ 特異性の原理:取り組んだ運動の効果が現れる
✔ 可逆性の原理:やめると運動効果は失われる
次のステップでは、それぞれの原理について深堀していきます。
日常生活でありがちな声かけも取り上げていきますのでぜひチェックしてみてください!
過負荷の原理=いつもより少し強い刺激が効果を生む
いつもと同じ運動(声かけ)では、大きな変化は期待できません。
感覚入力における過負荷(刺激の増大)を意識しましょう。
「お話しを聞く」「行動に移す」という脳の注意システムを起動させるイメージです。
いつもより早いタイミングで声をかけてみる
脳が次の行動を予測・準備するためのアイドリング時間を意図的につくります。
脳の処理プロセスへの過負荷です。
いつもより声を高く、または低く伝えてみる
聞き慣れた親の声(BGM化している音)を変えることで聴覚野が反応し、注意を向けさせることができます。楽器や遊び歌等での導入も同様の効果が期待できます。
聴覚的な過負荷です。
いつもよりたくさん声をかけてみる
情報を細切れにして何度も入力することで、脳の活動レベルを維持させます。
脳の覚醒水準を保つための頻度・情報の過負荷です。
特異性の原理=やった運動の効果が現れる
刺激した部位や機能にだけ効果が現れます。
腕の運動をしたら腕が、足の運動をしたら足が鍛えられます。
つまり、効果を高めたい行動にピンポイントでアプローチする言葉選びが大切になります。
「お片付けしてね」
「ご飯を食べる前に片付けよう」
「車は黒い箱の中に入れてね」
「手裏剣はこっちの袋にいれようね」
「きちんと座ってね」
「お椅子におしりをぺったんこするんだよ」
「背中はピッと伸ばすよ」
可逆性の原理=やめると効果は失われる
運動(声かけ)をやめてしまうと、せっかく得られた効果が徐々に失われていきます。
注意が逸れるとさっきまで覚えていたタスク(回路)が消えるという形で現れます。
そのため、何度も回路を補強し、習慣化させていく必要があります。
毎日、何度も声をかける
子どものワーキングメモリは保持時間が非常に短く、数秒〜数分で別の刺激(おもちゃが見えたなど)に上書きされます。
また、脳の神経回路は、頻繁に使われるものは太く補強されますが、使われないものは消去されてしまいます。
そのため、同じフレーズやルールを繰り返すことが必要です。
(やり方を頻繁に変える)
「ごはんの前には手を洗おうね」
「YouTubeはお風呂が終わってからの約束だよ」
「昨日も言ったのに」と思いたくなるところですが、ぐっとこらえて何度も伝えましょう。
行動を再現することで必ず定着します。
すでにできていることも声に出して伝える
できている状態を言葉にしてフィードバックすると、脳内でドーパミン(快楽物質)が分泌されます。
これによりその行動が成功パターンとして脳に強く刻まれます。
また、一度できたからといって声かけをやめてしまうと、子どもの脳の回路は元に戻ります。
習慣化されるまで一貫性を持って反復することが大切です。
・・・(無言)
「ひとりでお靴履けたね」
「そうそう、リボンがついているほうが右なんだよね」
「ひとりでできるようになったけど、ちゃんと見てるよ」と安心させてあげましょう。
また、できている行動を実況することでさらに強く定着していきます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ここまで、幼児期の脳の特性をふまえたうえで、運動(声かけ)原理について解説してきました。この記事の最重要ポイントを整理して振り返りましょう。
✔ 過負荷の原理: 声かけの変調により脳の注意システムを起動させる
✔ 特異性の原理:狙った行動をピンポイントで指示する
✔ 可逆性の原理:何度も回路を補強し、できている時こそ声をかけて定着させる
最初は思うようにいかなくても、今回ご紹介した考え方を意識して繰り返すことで、子どもたちの行動が変化していきます。私たちが声をかける行為は、視覚・聴覚・言語・身体・情動・思考すべてを育てているのです。
子どもの脳にきちんととどいた言葉は、身体をポジティブに動かす手助けとなり、心を満たしてくれるはずです。
次回は「運動の5原則を活かした声かけ」について解説したいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました!他の記事もぜひチェックしてみてくださいね!

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