赤ちゃんの “伝えるちから”

「はい、どうぞ」「息子くん、ママにちょうだいね」「ありがとうね」
生後11か月の息子くんは、受け渡し遊びをするようになりました。
あのご機嫌な笑顔は永久保存です。

人間発達学や心理学において、
受け渡し遊びは、言語獲得への大事なステップだと位置づけられています。

今回は、受け渡し遊びに関連して、生後10か月頃からみられる三項関係の成立と社会的参照について見つめていきたいと思います。

“伝える能力” がレベルアップ

10ヶ月以降の乳児の伝達行動は、飛躍的な2つの変化が生じます。
①三項関係の成立 ②伝達手段の組み合わせ です。

三項関係の成立

9ヶ月ごろまでの赤ちゃんの外界とのかかわりは、“自分と人” か “自分もの” という
2つの要素で完結してまい、“自分と人ともの” という3つの要素をひとまとめにして
遊ぶことはできません。

ところが10ヶ月ごろになると、ものの受け渡し遊びのように、
ものを使って大人と一緒に遊べるようになります。 これを三項関係の成立といいます。

三項関係の成立なくして指さし行動や言語の獲得はありえません。

受け渡し遊び

ボール遊びには、順番の交代に加えて、受け手と渡し手という役割の交替がが含まれます。
そのため、このタイプの遊びを役割交替の遊びといいます。

ボール遊びの構造は、向かい合う2人が役割を交替しながらやりとりするという点で、
会話の構造と類似しています。

役割交替の遊びを通じ、聞き手と話し手の役割交替という会話規則を学んでいます。
ここでわかるのは、赤ちゃんは言語を獲得するとされるずっと前の段階から、
言葉を受ける・届ける準備をしてるということです。

伝達手段の組み合わせ

10ヶ月ごろまでの意図的伝達は声を出して大人を呼ぶ、興味のあるものと大人の顔を交互に見るというのうな、単調なものです。

ところが10〜12ヶ月になると、
大人の顔を見ながら声を出して注意を引き、ものを手渡すといったように、
視線、発声、身振りなどの非言語的な伝達手段が組み合わされるようになります。

そして、この頃、指さし行動が出現します。

指さし行動

指さしは音声を持たないものの、「あっち」「あれ」という情報を、指し示すという行為によって、
相手の頭の中に思い浮かばせる象徴機能をもちます。

象徴機能とは、目の前にない人や物を、言葉や絵、別の物に見立てる行動などを使って
頭の中で思い描き、表現する能力のことです。
代表的な例として、「言葉を話す」「積木を車に見立てて走らせる」などが挙げられます。

指さし、ごっこ遊び、言葉は象徴機能としての側面を持ちますが、この中で唯一、指さしには表象機能はみられません。

表象機能とは、目の前に実物がなくても、その人や物、出来事を頭の中でイメージを思い描き、言葉や別の物を使って表現する能力です。

指さし行動は今、目の前にある世界に縛られており、ごっこ遊びや言葉のように目の前にないものを表すことはできないため、より原始的な行動だといえます。

これらの理由から、指さしを豊かに使いこなせる子どもは、言葉への移行もスムーズだと
考えられています。そのため、一歳半健診ではその有無がチェック項目とされています。

社会的参照

社会的参照は、生後9か月頃から兆しが見られるようになり、1歳前後ではっきりと表れます。

三項関係の成立が前提条件であり、
赤ちゃんは「大人は自分と異なる視点や感情、情報を持っていること」に気づきます。


社会的参照は、他者の感情や情報をメッセージとして読み取り、自分の行動に反映させる高度なコミュニケーションです。

社会的参照(social referencing)とは、乳児や幼児が不安を感じたとき、信頼する他者の表情や行動を手がかりにして、自分の行動や感情を決定する心理的プロセスを指します。
子どもが社会のルールを他者から学ぶ、大切な力です。


また、社会的参照は、情緒の共有や他者理解、共感性の発達において基盤となる能力です。

大人でも、初めての場面で周囲の人の反応を見て判断することがあります。
たとえば、作業中におもしろい音が鳴ったとします。
「笑っていい場面なのか」と周囲を見て確認するのも、社会的参照の一例です。

社会的参照は発達初期に始まり、生涯を通じて私たちの社会的行動に影響を与える重要な心理的メカニズムなのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
受け渡し遊び、指さし行動の裏側では、こんなにも大きい変化が起こっているのです。
子どもたちの成長が、今まで以上に愛おしいものに感じられますよね。

言語の獲得の前に、子どもたちは多くの伝達能力を獲得し、育てています。

むやみに言葉を促すのではなく、子どもがみつめる方向や、指さす方向を一緒に共有することが大切です。子どもからの発語を求めるのではなく、まずは周りに大人が、情景や感情について声に出して伝えてあげるようにしてあげましょう。
子どもたちが外からの刺激を安心して受け取れるような環境づくりも大切です。

お話しはせずとも、マイペースでも、ママやパパからの言葉を受け取って
ポケットに山ほどしまいこんでいる子どもたちも大勢います。
表現の芽を育てている子どもたちを、あせらずゆっくり見守ってさしあげてくださいね。

今回のお話しは以上になります。
この記事がどなたかのお力になっていますように。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

当ブログでは、理学療法士と上級心理カウンセラーの資格を持つママが、日常生活を観察したり、気になる話題について勉強したりしています。ほかの記事もぜひチェックしてみて下さいね。

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