子どもも大人も、右肩上がりの直線ではなく、階段のように急成長と停滞を繰り返しながら成長していきます。
特に乳幼児期から青年期にかけての発達はめざましいものがあります。
しかし、成人期以降、もちろん老年期においても衰退の過程ととらえられるべきではありません。
「生涯発達」という考え方が広まってきています。
停滞期には何が起こっているのでしょうか。どんなふうに接してあげたらいいのでしょうか。
この停滞期の謎は、分化と統合にヒミツがあるかもしれません。
当ブログでは、理学療法士と上級心理カウンセラーの資格を持つママが、各年代での停滞期を見つめていきたいと思います。
今回はその第3回「青年期の停滞感」についてです。

この記事は、
✔ 青年期のモヤモヤを解消したい
✔ モラトリアムについて深く知りたい
✔ 青年期の子どもに対し、親の役割に悩んでいる
そんな方々に向けて作成いたしました。
解決のヒントや、身近な方への理解につながれば幸いです。
青年期の特徴
青年期は12~22歳頃までと幅広く、12~15歳頃の青年前期、15~18歳頃の青年中期、18~22歳頃の青年後期に分かれています。
青年期の発達課題は自我の確立(アイデンティティの形成)です。
「これから自分はどんな人生を歩めばいいのか?」「自分には何ができるのか」といった深い疑問を抱え、試行錯誤しながら答えを見つけていかなければなりません。
精神的に非常に不安定な時期なので、周囲の環境に振り回され、感情の起伏も激しくなりがちです。
このような不安定な状況が影響して、親に反抗して孤立を求めているかと思いきや、悪とわかりながら飛行の仲間集団にしがみつくなどしてトラブルを引き起こしてしまうこともあります。
この時期は、周りからの援助を拒否することが多いのですが、この反発は発達段階からくる自然な反応と受け止め、心に寄り添う姿勢を保つことが重要です。
青年前期
子供の思考からの分化がすすみ、脳のアップデートが加速します。
感情や自己イメージが急激に分化して、脳がパニックを起こす(停滞期)こともあります。
客観的・抽象的な思考力
目に見えないもの(数式のxや、正義、自由といった概念)、仮定の論理を理解できるようになります。
リアルに縛られない、無限の可能性を論理的にシミュレーションできる強力なCPUを搭載した状態です。
だからこそ、「自分は将来どうなるのか」「他人は自分のことをどう思っているか」という、目に見えない不安を大量に生み出してしまいます。
アイデンティティ
この時期はまだ本格的な社会への迷いはありません。
自己イメージの分化がすすみ、学校での自分、家での自分、部活での自分など、場面ごとの自分がいることに気づきます。
「本当の自分はどれ?」「友達からどう見られているか」「自分は周りと違って変ではないか」と考えることがモラトリアムの入り口になります。
人間関係
自分と他人の境界線が薄いため、同じグループの友達と趣味や服装、意見を合わせることで安心します。友達の意見=自分の意見になりがちです。
「楽しい・楽しくない」「ダサい・ダサくない」「おもしろい・つまらない」というような単一の感情の物差しでグループを作りがちです。
だからこそ、グループ内でのすれ違いや仲間外れを極度に恐れ、クラスの人間関係だけで世界が一杯になります。
恋愛
青年前期の恋愛は、まだ「相手そのもの」を見ていないことが多いです。
付き合っているというステータスや、憧れの延長で好意を寄せることもあるでしょう。
この時期の「好き」という気持ちは単調であることが多く、お互いが同じ熱量でラリーし続けることができない場合、長続きしなかったり、表面的な関係で終わりやすいです。
青年中期
選択肢や人間関係がさらに広がり、TPOにあわせた能力の使い分けができるようになっていきます。
精神面でいうと、親からの自立(心理的離乳)を目指し、自分という人間を統合していく時期です。
すべての悩みが「私」という答えに向かって繋がっているため、勉強や部活動、進路、友人関係、恋愛…等、たくさんのことを同時に考えざるを得ないのです。
メタ認知能力
自分を客観的にみる力が備わるため、「自分は朝の方が勉強がはかどるな」「自分はプレッシャーに弱いから、早めに準備しよう」など、自分の取扱説明書を作れるようになります。
「他人が自分をどう見ているか」「周りと比べて自分はどうなのか」という視点も急激に発達しています。
アイデンティティ
これまでバラバラに分化した「いろんな自分」や「たくさんの価値観」を、統合していきます。
そして、青年中期の大きなライフイベントである大学進学や就職。
自分の自分の強みと弱みをハッキリと分けて認識し、それをもとに進路選択を行います。
人間関係
「私は私、あの人はあの人」と、お互いの違いを認められるようになります。
人間関係が多様化し、「この子とは進路の話ができる」「この子とは趣味が合う」と、目的に応じて深く付き合う相手を選べるようになります。
自分のものさし(自分軸)を持ちながら、相手のものさしも尊重することが大切です。
相手が自分と違う意見(違うものさしで測った時)を言ったとき、無理に合わせる必要もなければ、相手を攻撃する必要もありません。「あなたはそう測るんだね。私はこう測るよ」と、お互いの違いをそのまま認めて、対等に会話ができる状態を目指します。
恋愛
相手の内面や欠点も含めて相手と深く結びつこうとします。
「相手の幸せのために、自分は何ができるか」「お互いの進路が離れても関係を続けられるか」といった、相手を思いやる(ケアする)大人な恋愛に進化します。
単に「好き」という感情だけでなく、「相手と自分の人生のバランス」を本気で考えている、とても成熟した悩みです。
青年後期
脳のアップデート(前期)も終わり、TPOに合わせた能力の使い分け(中期)もできるようになったあと、大人の社会で生き抜くための最終関門です。
進学や就職を通して、社会的な自立や役割を担っていく時期です。
様々なスキルや、自分という人間の個性、感情や価値観がジグソーパズルのように組み合わさり、アイデンティティとして確立していく時期です。
社会的役割の遂行力・自律力
ひとり暮らしやバイト、就職などを通じて、自分で生活を管理し社会のルールの中で他者と協調していくことが求められます。
これまでバラバラに学んできた知識、コミュニケーション力、マナーなどが統合され、社会人として臨機応変に動けるようになります。
アイデンティティの確立
ダメな自分も魅力的な自分も、すべて「これが自分だ」と受け入れられるようになります。
これが統合であり、統合が完了するとモラトリアムから完全に脱出します。
アイデンティティの再構成
一度完成したアイデンティティが再び崩壊し、再構築されるプロセスを経験します。
正しい努力をしていても、環境や運に左右され、成果が出ない時期が続くこともあります。
自分より遥かに優秀な人を目の当たりにし、停滞感を感じることもあります。
長い時間をかけて納得して選んだ道なのに、その先で想像以上の大きな壁(停滞感や挫折)にぶつかることで、「私の選択は間違っていたのか」「私はこんなにも無力だったのか」と、自我の根底が激しく揺さぶられるのです。
ですが、「自我が揺らぐ」ということは、決して悪いことではありません。
この大きな揺らぎを経験し、それを乗り越えると、非常に強いしなやかさを手に入れます。
なぜなら、「アイデンティティはまた作り直せる」という強力な成功体験ができるからです。
これが、生涯にわたって挫折に強い心の土台になります。
モラトリアムと停滞期
青年期が厄介なのは、モラトリアムと停滞期が同時に発生しやすい点にあります。
モラトリアムと停滞期の違い
例えば、受験勉強を頑張っているのに、模試の点数がまったく伸びない(=停滞期)という状況に陥ったとき、青年期の心は「本当にこの大学を目指していていいのだろうか? 自分のやりたいことは何だろう(=モラトリアムの問い)」と、進路の迷いへとすり替えてしまいがちです。
この場合であれば、「今は脳が次のステップへ進むために情報を整理している時期(停滞期)だから、焦らずに今の努力を続けよう」と捉えることが、成功の秘訣になります。
対処法
モラトリアムも停滞期も、どちらも本人にとっては、前に進んでいない感覚(焦燥感や不安)を伴いますが、両者には明確な違いがあり、対処法も異なります。
モラトリアムは次のステップや進路へすすむための準備・実験の期間であり、方向性を探す(Where)悩みです。
大人は答えを誘導せず、「悩んで当然だよ」「どんなダメな部分があってもあなたの価値は変わらないよ」と、安心を与えてあげることが必要です。そのうえで、「〇〇っていう考えもあるけど、あなたはどう思う?」と話しをしていきます。最終決定権はお子様を信じて委ねます。
停滞期は脳や身体が新しい技術や知識を整理・定着させている期間であり、やり方や成長のペース(How)の悩みです。
親御さんたちは、聞きたい気持ち、励ましたい気持ち、渇を入れたい気持ちをぐっと飲みこんで、美味しいご飯と安心できる居場所を用意して、青年期のアップデートが終わるのを待ちましょう。
家庭は充電器です。本人から話し出したときはしっかり受け止めるようにします。
完璧ではない大人の姿をみせること
私たち大人が、時に悩み、ダメな部分に凹む姿は、子どもたちにとっては「大人になる恐怖」を和らげる最高の教科書になります。
「自分の失敗」を笑い話として実況中継する
「〇〇忘れてた、ショック―!明日朝イチでやろうっと。今日の夕ご飯は元気出すためにデザート付けちゃお!」
💡大人でも失敗するんだ。でも、隠さなくてもいいし、美味しいもの食べて切り替えていいんだ
「正解がわからない姿」をそのまま相談する
「今度、職場の若い子と面談があるんだけど、どう声をかけたらいいか分からなくて悩んでるんだよね。〇〇(お子様)なら、先輩に何て言われたら嬉しい?」
💡大人になっても人間関係で迷うのは普通なんだ…
「機嫌が悪い理由」を言葉で説明する
「今、お母さん(お父さん)ちょっと仕事が上手くいかなくてイライラしちゃってるんだ。みんなのせいじゃないから気にしないでね。ちょっとお風呂にゆっくり入って頭冷やしてくる!」
💡感情コントロールが完璧じゃなくてもいいんだ。
そういう時は、周りのせいにせず、自分で距離を取って休めばいいんだ。
過去のダサいエピソードを話す
「お母さんも高校生のとき、お友達の〇〇ちゃんが羨ましくって、嫉妬したり悔しくって泣いたよ。今思えばそんなに悩まなくてもいいことなんだけど、当時は必死だったんだよね」
💡お母さんも、今自分が感じている感情(ドロドロした部分)があったんだ。
私は変じゃないんだ、嫌な奴じゃないんだ。
子どもたちの背中を押す独り言を
「悩んでいるけれど、まぁ大丈夫だよ」「ダメなところもあるけど、自分のこと嫌いじゃないよ」という、ちょっと図太い、お茶目な大人の背中を見せてあげること。
それだけで、子どもたちは「大人になるのって、そんなに怖くないかもな」「完璧じゃなくてもいい。相談したり、休んだりしてもいい」と、安心して歩みを進めることができます。
まとめ
いかがでしょうか。
青年期の停滞期は、モラトリアムと密接に関係していることがわかりました。
この記事の最重要事項を確認していきます。
✔ 客観的に自分をみることができるようになり、アイデンティティの模索が深まる
✔ グループ内や恋愛において、より成熟した関係性を築いてく
✔ 様々な悩みに押しつぶされ、心が不安定となり、家族との関係も希薄になりがち
この時期にできる家庭でのサポ―トは、子どもたちが安心して重荷を下ろせる安全基地を維持することです。
あたたかいお風呂においしいご飯。いつも通りの時間が何よりも必要です。
また、子どもたちを自分たちと対等な人間と認め、必要な時に語り合うことが大切です。
学童期後半でお話したサードスペースも、青年期の心を癒す有効な空間です。
この記事の内容が、少しでも皆様のお力になれていれば幸いです。
さて、当ブログでは「子どもにも大人にもある停滞期」をじっくり考えています。
次回は第3回「成人期の停滞感」についてみつめていきます。
この記事が参考になった方は別の記事もぜひチェックしてみてくださいね!

コメント