子どもも大人も、右肩上がりの直線ではなく、階段のように急成長と停滞を繰り返しながら成長していきます。
特に乳幼児期から青年期にかけての発達はめざましいものがあります。
しかし、成人期以降、もちろん老年期においても衰退の過程ととらえられるべきではありません。
「生涯発達」という考え方が広まってきています。
停滞期には何が起こっているのでしょうか。どんなふうに接してあげたらいいのでしょうか。
この停滞期の謎は、分化と統合にヒミツがあるかもしれません。
当ブログでは、理学療法士と上級心理カウンセラーの資格を持つママが、各年代での停滞期を見つめていきたいと思います。
今回はその第4回「成人期の停滞感」についてです。

この記事は、
✔ 成人期のモヤモヤを解消したい
✔ クォーターライフ・クライシスについて知りたい
✔ 女性特有のアイデンティティ崩壊や親密性つまづきについて知りたい
そんな方々に向けて作成いたしました。
解決へのヒント、身近な人を理解するきっかけとなれば幸いです。
クォーターライフ・クライシス
20代〜30代に多くの人が経験する、人生の方向性に対する漠然とした焦燥感や無力感のことです。
「どの道に進んでも、選ばなかった別の可能性への後悔が残る」という恐怖が、停滞感を生みます。
この時期の停滞感は、①アイデンティティの崩壊と再獲得 ②大切な人との繋がり方(親密性)
が大きな原因となります。
次の項目で詳しくみていきましょう。
アイデンティティの崩壊と再獲得
20代後半~30代になってから「本当にこの仕事・この生き方でいいのか」と悩む人が増えていきます。
心理学では、人間が幸福感やモチベーションを維持するためには自己効力感(自分はやればできるという感覚)と進歩の感覚が必要だとされています。このため、日々同じようなルーティン業務が続くのでゴールや区切りが設定しにくく、果てしなさを感じずにはいられません。
20代後半〜30代が抱える絶望感や停滞感は、決してサボっているわけでも、心が弱いわけでもなく、大人の世界の広さと果てしなさに、心が圧倒されている状態なのです。
分化と統合の目線
「理想の自分」という大きな塊を、現実のパーツへと切り分ける作業をしていかなければなりません。
その過程で自分の能力の限界や、不完全さを突きつけられます。
自分の価値が分からなくなる感覚が、未来への絶望感や無気力感を生み出します。
さらに言えば、夢、仕事、趣味、友人関係、恋愛など無限の選択肢から、何かを選び、何かを捨てる(諦める)ことを突きつけられる過酷な時期です。
同時に、友人関係や恋愛の分化がすすみ、疎遠になる人物や、より身近に感じる人物など、距離感や親密性に変化が生じます。
最終的には、自分が選んだものを自分の人生の中に受け入れ、調和(統合)させていきます。
女性特有のアイデンティティ
特に女性にとっては、アイデンティティの崩壊・再獲得をした後、もう一度それを繰り返す必要があります。そのライフイベントこそが、結婚や妊娠・出産、子育てです。
子育てと仕事のバランスを考えたとき、どちらも100%でいたいのにそれが困難だと気付きます。
そして、子育てに関しては自分でコントロールできない要素(子どもの体調、時間の制約など)が多く、これまで経験してきたアイデンティティ形成とはまた違う種類の苦しみを伴います。
大切な人との繋がり方(親密性)
親密性のつまづき
親密性のつまづきとは、以下のような状態をいいます。
✔ 家族や友人と疎遠になる
✔ 恋愛や結婚が思うようにいかない
✔ 職場で本音を話せる仲間がいない
仕事や日々のスケジュールの忙しさから、友人や恋人との距離ができてしまうことはよくあります。
また、気持ちが塞いでしまって気力がわかず、疎遠になってしまうケースも珍しくありません。
自分だけではなく、相手も同じように過酷な環境で過ごしているため、すれ違いが繰り返された結果として、親密性のつまづきに繋がっていきます。
エリクソンによれば、20代〜30代の発達課題は、他者と深く確かな関係を築く親密性の獲得です。安心できる環境・安心できる自分の居場所を自分でつくっていくことが課題となります。
幸せの基盤づくりに失敗したり、社会的な繋がりが希薄になると、「自分は社会から取り残されている」という強い停滞感(孤立感)に繋がります。
女性特有の親密性のつまづき
結婚・出産後、ご主人や子どもへの愛(親密性)が強すぎるあまり、自分の時間やアイデンティティをすべて子どもに注ぎ込んでしまい、自分自身をすり減らしてしまうことがあります。
仕事との両立に忙しくされている女性に特に多くみられます。
自分のエネルギーを削り続けてバランスを保とうとする状態を過剰適応と呼び、心と体が限界を迎えたときにふと虚無感が訪れます。
この自己犠牲による疲弊が、心をフリーズさせてしまうこともあります。
理想の自分との乖離
以下のように、子どもの頃に思い描いていた20代~30代の自分と冴えない現実の自分を比較して絶望するケースも非常に多いです。
✔ 仕事でバリバリ活躍し、十分な収入がある
✔ プライベートも充実し、素敵なパートナーがいる
✔ 常にキラキラした刺激に満ちている
しかし現実には、スケジュールに追われ疲れて家に帰る毎日。
「万能だったはずの自分が、何者でもないただの歯車になっている」という現実を受け入れるプロセスは、心理学でいう全能感の喪失であり、アイデンティティの崩壊と再構築の最も苦しいステップです。
成人前期(20代〜30代)における親の役割
安全基地から港(ポート)
青年期の親の役割が安全基地(何かあっても戻れる場所)を提供することだったのに対し、子どもが成人前期に入ったときの親の最大の役割は、港(ポート)へと関係性を変化させることです。
社会でボロボロになった子どもが、自己否定せずにエネルギーを回復できる、利害関係のない避難所となります。ここでの港は実家を意味するわけではなく、親の姿そのものです。
燃料の補給
社会で戦っている子どもは、生きるための基本的なエネルギー(食欲や睡眠)が枯渇しています。
言葉での励ましではなく、物理的な支援で生命力を回復をサポートします。
おいしいご飯と温かいお風呂を準備し、ただ泥のように眠ることを許します。
離れて暮らしているなら、レンジで温めるだけのレトルト食品や、子どもたちの好きなものを送るのもいいでしょう。返事不要の絵葉書なども、子どもの心をほっとさせるでしょう。
船体の修理(何者でもない自分の全肯定)
社会に出た子どもは、常に成果、肩書き、有能さという評価に晒され、アイデンティティが傷ついています。仕事の出来栄え、同期との比較、結婚の予定などについて親からは一切質問しません。
実家にいる間は、社会的な肩書きをすべて剥ぎ取った「ただの我が子」として扱い、くだらない昔話や雑談に終始します。「社会的に優秀でなくても、ここにいれば自分は100%受け入れられる」という無条件の存在肯定が、傷ついた自己肯定感を修復します。
出港の邪魔をしない(アドバイスの放棄)
港は船を引き留める場所ではなく、再び海へ送り出す場所です。
親の心配や口出しは、港の出口を塞ぐ障害物になってしまいます。
子どもが「会社を辞めたい」「もう無理かも」と弱音を吐いたとしても、「こうしなさい」と解決策を言わない。「そこまで追い詰められるほど必死に頑張ったんだね」と、ただその痛みに共感し、判断は本人に委ねます。
親に自分の決定をコントロールされない安心感があるからこそ、子どもは安心して港に寄り添い、自分の意思で「もう一度出港しよう」というエネルギーを内側から生み出せます。
常にそこにあるという安心感(常設の灯台)
港として最も重要なのは、子どもが危機に瀕しているときも、順調なときも、親側の状態(情緒や生活)が変わらず安定していることです。
親自身が子どもの心配ばかりに人生を費やすのではなく、自分の趣味や仕事、人生を活き活きと楽しんでいる姿を見せましょう。
「実家(親)はいつも通り変わらずにそこにある」という確信自体が、子どもが荒海を航海する上での目に見えない精神的支柱(灯台)になります。
港のまとめ
親として何かをしてあげるのではなく、「離れていても、あなたの味方であり続ける」という親の姿勢そのものが、子どもの心の中に「心理的な港」を作っている状態です。
縦の関係(親と子)から横の関係(大人同士)へ
一番難しく、かつ重要なのが「子育ての卒業」を親自身が受け入れることです。
指示やアドバイス(こうしなさい、やめなさい等)は、子どもの自立の足を引っ張ります。
これからは人生の少し先を行く先輩として、対等な目線で接することが求められます。
子どもが悩んでいるときは、答えを出すのではなく「あなたならどうしたい?」と問いかけ、本人の決定権を尊重します。
無条件の肯定
クォーターライフ・クライシスに陥ると、成果や条件だけで評価され、心がすり減っています。
そんなとき、「何者でもない、ただのあなたでいていい場所」であることが必要です。
「仕事がうまくいかなくても、結婚しなくても、あなたが元気で生きていてくれればそれでいい」という無条件の存在全肯定は、子どもが再び社会へ漕ぎ出すための最強の燃料になります。
親自身が「自分の人生」を活き活きと生きる
最も身近な大人のロールモデルは親です。
親が子どものことばかりを心配し、自分の人生を楽しんでいないと、子どもは「大人になるのって、義務ばかりでつまらなそうだ」「自分がしっかりしないと親を悲しませる」と重荷に感じてしまいます。
親自身が趣味を楽しみ、学び、自分の人生を肯定的に生きている姿を見せることこそが、
「大人になるって悪くないな」という最高の道標になります。
自分で自分を守れるように
ここまで、親目線から「子どもをどう守るか」を考えてきました。
次は、子どもたちが社会で戦いながら自分の力で自分を守り抜くためのコツを3つお伝えします。
箱を分ける
様々な悩みがプライベートや睡眠時間にまで侵入し、24時間心が休まらなくなったり、友人関係や恋愛が仕事に影響することもあります。「仕事の箱」「友達の箱」「恋愛の箱」「プライベートの箱」…というように箱を作ります。箱には扉をつくり、しっかり扉を閉めるようにしましょう。
どんなに仕事がうまくいかなくても、「仕事の箱」の中だけで反省します。
終わったら扉をきちんと閉め、「プライベートの箱」には絶対に持ち込みません。
「仕事の失敗」=「人間としての自分の否定」ではない、と境界線を引きます。
SOSのボタンを持っておく
心が限界を迎える前に、自分の弱音を、アドバイスなしでただ受け止めてくれる場所を1つは確保しておくことです。家族や友人、サードスペース(趣味サークルやオンライン)でも、なんでも大丈夫です。
ハードルを下げる
周りの優秀な先輩や、SNSに溢れる「キラキラな日々」「一発逆転劇」を見ると、早く成果を出さなければとアクセル全開で爆走し、自爆してしまいます。
自分の合格点を下げてあげることで、自分の心を守ってあげましょう。
しかしながら、「生きているだけでOK」というスタンスは、簡単なようで、追い詰められた人間にとっては、自分の力だけでたどり着くのはほぼ不可能な境地です。
自分で自分を「生きてるだけで偉い」と思えない人間に対して、「あなたが仕事で成果を出せなくても、同期の中で遅れをとっても、生きてるだけでお母さん(お父さん)にとっては100点満点なんだよ」と、外側からその評価を上書きしてあげること。
それが親にしかできない役割です。
港で無条件の愛を補給してもらううちに、子どもは少しずつ、「成果が出せなくても、自分はここにいていいんだ」と心を満たすことができます。
まとめ
いかがでしょうか。
成人期の停滞期は、①アイデンティティの崩壊と再獲得 ②大切な人との繋がり方(親密性)が大きく影響していることがわかりました。
では、この記事の最重要事項を確認していきます。
✔ 「この生き方でいいのか」と悩み、焦燥感や無力感に苛まれます
✔ 親密性を求め、相手を尊重した関係性を築こうとします
✔ 子ども自身も、自分の心を守る術を身に着けることが大切
✔ 親の役割は安全基地から港へと変化していきます
✔ 親も自分の道を生き生きと歩む
青年期までとは異なり、より成熟したアイデンティティのがつくられていきます。
また、自分の安心できる居場所を自分で確立することも求められます。
これまでの時期は親のサポートが大切になるというお話しを多くさせて頂きましたが、社会で戦い、新しい家庭を持つことが増える成人期では、セルフケアの力も必要になってきます。
自分の心と身体が何より1番大切であることをどうか忘れないようにしてください。
そして、この記事では、親の存在が港のようなものだとお伝えしました。
しかしながら、港の役割を担うのは、親とは限らないということも覚えておいてください。
自分にとっての港は何か。それは、必ずしも人物ではないかもしれません。
物や場所かもしれません。自分の心が安らぐ港に寄りましょう。
さて、当ブログでは「子どもにも大人にもある停滞期」をじっくり考えています。
次回は第5回「壮年期の停滞感」についてみつめていきます。
この記事が参考になった方は別の記事もぜひチェックしてみてくださいね!

コメント